コートヤードHIROO3Fガロウでは12月3日(金)から12月26日(日)までキュレーター三宅敦大によるグループ展『Over the fence』を開催致しております。(展示詳細はこちら


先月の展示に引き続き今回もキュレーターをお迎えしての展示となりました。
キュレーター三宅さんの本展示のステートメントにも「新型コロナウイルスの感染拡大は、誰かと離れることであると同時に、親密になることでもあった」とあるように、「今は届かないが、あったであろう親密な呼吸」を思い出し想像し紡いでいくような展示空間のように思えました。

あくまで個人的な見解・感想になりますが、「呼吸」というのはとてもアイコニックです。「生死」「密接」「温度」様々なものを連想させます。コロナになりマスクで呼吸を阻まれる息苦しさを感じました。息をするという行為の示すもの、その視覚的な比喩などを含めた表現が非常に豊かに備わっている展示だと思います。


最初の部屋の伊藤さんの作品ではビデオに登場するおばあさまと同じ言葉を同時に喋る映像が流れており、生死・時間・空間を超え、呼吸を合わせています。作中で息をする、しないということも大きくこの作品に関わっています。

津田さんの作品は絵画と、中庭にキューブ型のインスタレーションの二種類展示されております。キューブの作品は自分の呼吸がよく聞こえ、自分の中に迷い込み、見失い、同時に自分を見つけるような感覚を覚えました。

早川さんの《Meet up around 8PM》はとても今時な体験型映像作品ですが、インタラクティブではなく、そこにある呼吸は自分だけなのです。ですが、時に話をふられることもあり、知らない人との会話が進んでいきます。そこは何も言葉を発さずとも他人の呼吸に合わせるような、無関係の傍観者になりきれない空間で、今までの自分、時間・繋がりなど、何かをごっそり越えて干渉する不思議を感じさせます。

岩崎さんは、虫の標本の羽にその生き物の原生していた風景をプリントしてあり、もう息をしていないその昆虫のルーツ、息をしていた頃を想像させるような力強い作品です。人だけではなく、生き物、自然そのすべてがいつの時代も時を共にし、密に歩んできたことを思い出します。

スクリプカリウ落合さんは人物写真の顔部分に空気を含んだビニールが縫ってあります。それは写真の中の人の呼吸の可視化であり、今私たちも口の前にビニールを被せたら呼吸を見ることができます。その吸って吐かれた微粒子はだれかの中でなくなることなくあり続けているかもしれません。




「彼らはそれぞれの体験の中でそれぞれの「境界」を認識し、なんのために引かれた境界で、自身はなぜ今こちら側にいるのかを作品を通して探ります。」




自分は今、どこで呼吸をしているのか。
そちらとこちらは隔てられているのか、繋がっているのか。
そんなことを考えさせられる展示です。ぜひ足をお運びくださいませ。


[展示概要]
Over the fence

会期|12月3日(金) − 12月26日(日)
会場|コートヤードHIROO
入場|無料
開場時間|12:00-19:00
月曜休場

出展作家|伊東宣明/岩﨑広大/早川翔人/スクリプカリウ落合安奈/津田みなみ
キュレーター|三宅敦大
主催|コートヤードHIROO
協力|WAITINGROOM、 AKIO NAGASAWA Gallery


Contact us: garou@cy-hiroo.jp