大山エンリコイサムが本展のために制作した「ファウンド・オブジェクト」シリーズの新作15点を発表します。「ファウンド・オブジェクト」は、拠点のニューヨークをはじめ、作家が世界各地を旅する際に訪れた古道具屋で、目が合い、惹かれて手に取った、額装された匿名のドローイング、写真、プリントなどの上に、大山の作品を構成するモチーフ「クイック・ターン・ストラクチャー(Quick Turn Structure)」を配置したシリーズです。オブジェクトと出会う時点から制作は始まると本人が述べるとおり、作品のキャプションにはそれぞれの土地の名前も記されます。紙ヤケし、シミのついた作品や、傷んだフレームは、それを制作した顔の見えない作り手やその場所・時代に、鑑賞者の想像力を誘うでしょう。「ファウンド・オブジェクト」シリーズのみで構成される大山の個展は今回が初となります。都会の喧騒を離れた隠れ家のような空間で、静かに思い思いのストーリーを紡ぎだして頂ければと思います。

開催期間:2017年9月1日(金)~ 9月30日(土)
オープニング:9月1日(金)17:00 ~ 21:00
開場時間:12:00 ~ 19:00
主催:株式会社アトム コートヤードHIROO
企画:M&Iアート株式会社
企画協力:Takuro Someya Contemporary Art
■大山エンリコイサム プロフィール
at the clocktower, june 17th 2013

1983年 東京生まれ ニューヨーク在住
2009年 東京藝術大学大学院 美術研究科 先端芸術表現専攻 修了
2007年 慶応義塾大学 環境情報学部 卒業
グラフィティ文化の視覚言語を翻案したモチーフ「クイック・ターン・ストラクチャー(Quick Turn Structure)」で知られる大山エンリコイサムは、壁画や絵画を中心に、ライブ・パフォーマンスやサウンド・インスタレーション、コム デ ギャルソンやシュウ ウエムラとの商業コラボレーションまで広く制作している。
60年代末のニューヨークで生まれたグラフィティ文化は、名前をストリートにかくことで、かき手のアルターエゴを表現するものだった。大山はそこから文字を取り除き、描線の運動に還元し反復することで、抽象的なかたちの広がりに再構成する。作家はそのかたちを「クイック・ターン・ストラクチャー」と呼び、ストリートに限らず、さまざまな物理的・社会的・概念的なメディアとの交渉のなかで、そのつど運動の痕跡を媒体に定着することで、一回性の作品として生み出します。これら個別の作品は、モチーフであるクイック・ターン・ストラクチャーと区別され、グラフィティの綴りをねじり、イタリア語の「figura ti (自身で象れ)」という表現を重ねた造語であるFFIGURATIという語に連番を加える方式でタイトルが与えられる。
また、グラフィティ文化やストリート・アートについて学術的な視点からアプローチした著書『アゲインスト・リテラシー グラフィティ文化論』(LIXIL出版)や、作家自身が監修しグラフィティ文化の特集に取り組んだ『美術手帖2017年6月号 特集*SIGNALS! 共振するグラフィティの想像力』を筆頭に、旺盛な執筆・批評活動も行なっている。