The Discoveries from A Certain Fable
2019年9月6日(金)-9月21日(土) 12:00-19:00
Opening Party 9月6日(金) 18:00-20:00
Entrance Free



相澤は、幼少期を里山で過ごした経験から、自然と人間が交わる境界領域、文明の廃棄物が混在する場、エネルギー消費の場などを、現代の複雑で多様な社会の中で失われていくことになる歴史的な遺産として価値を見出します。この地上に生命が誕生して以来、生命と環境という二つのものが、互いに力を及ぼしあいながら、生命の歴史を織り成してきました。そして、この先の未来における種の進化に関して、環境に依存した従来の自然選択による進化ではなく、人為的な不自然選択によって形づくられていくことになると予見します。本展では、それらを鑑みた一つの寓話をもとに作品を構成し、未来へ向かう生命の行き先を示唆します。


〈相澤安嗣志 Profile〉
1991年、神奈川県生まれ。2011年多摩美術大学美術学部絵画学科日本画専攻入学、2015年同学部情報デザイン学科メディア芸術コース卒業。日本画とメディア芸術の両方を学んだバックグラウンドを活かしながら、自然物、工業製品、素材の変容や現象を用いて平面作品や彫刻作品など多様な実践をしている。

「The Discoveries from A Certain Fable」
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とある寓話
むかしむかし、ここは自然豊かだった。山から流れる冷たく澄んだ川のせせらぎ、季節が変わるたびに緑に映える痛いくらい鮮やかな色彩、心躍らせる鳥のさえずり、これら様々なものが道行く人を楽しませる。はじめて人間という種族がこの地に分け入り、家を建て、井戸を掘り、田畑を耕し、家畜小屋を建て、生活の基盤をつくりながら文明を発展させてきた。その頃から自然はこうした姿を見せてきた。人間だけの世界ではなく、動物も植物も生命あるものはみな自然と一つだった。しかし、次第に人間は未来を見る目を失い、私利私欲のために自然をねじ伏せ従えようと実行に移した。自然との均衡を保ち、文明を築き上げた者でありながら、生命ある自然に向って残忍な戦いをいどむ。戦いはいたるところで行われ、そして、自然は沈黙した。

ここに堅く冷たい瓦礫がある。それらは乱雑に寂しく横たわっている。自然につくられた物でないことから、かつてここで人間の営みがあったことを思わせるが、今はその気配は無い。まるで住まいを破壊され火をつけて焼きはらわれたようだ。人間がいたという事実だけがここにある。でも、これは魔法にかけられたのでも、敵に襲われたわけでもない。すべては、人間がみずからまねいた禍いだった。瓦礫には植物の痕跡があり、化石のように見える。目の前にある痕跡は何者かに自分を見つけ出して欲しそうに光を伴って生命の脈動を主張している。
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このような場所が実際に存在するわけではない。私の想像の産物である。しかし、街を歩くと、これに似たような状態の場所は至る所に存在している。主人を失った半壊状態の家屋、タイヤがぺしゃんこになった車、沈みかけている冷蔵庫、緑に埋まった平らな空き缶、例を挙げたらキリがない。これは明日この場所で起こることかもしれない。
この地上に生命が誕生して以来、生命と環境という二つのものが、互いに力を及ぼしあいながら、生命の歴史を織り成してきた。今現在、この地上に息吹いている生命がつくり出されるまで何億年という長い長い時が過ぎ去っている。環境があってこそ生命は維持されるが、その環境も場所によっては生命を傷つけるところがある。それに対しても、発展、進化、分化と長い時を経て生命はやっと環境に適合した。時こそ均衡を保つ上で欠くことのできない構成要素なのである。地球が誕生してから過ぎ去った時の流れを見渡してみると、生物が環境を変えるという逆の力はごく小さなものにすぎなかった。しかし、二十世紀以降のわずかな間の技術革新や産業の発達、文明の発展により、先を急ぐ人間が時という要素を消し去り、均衡を崩してしまった。これは地球の歴史からみると、まったく一瞬といえるような短い間の出来事である。
それによって起こり得ることとは何か。私はこの先の未来における種の進化に関して、環境を起因とした自然淘汰による進化ではなく、不自然淘汰、即ち人為的選択によって定められ形成されていくことになると予見する。自然征服を夢見て浮き足立った人間は分かれ道に立っている。振り返れば、破滅への道があり、前を向けば、それとは別の道が広がっている。時という要素が無くなってしまったいま、均衡を執り持つために私たちは選択しなければならない。
本展では、これらを鑑みた、とある寓話をもとに作品を構成し、未来へ向かう生命の行き先を示唆する。