コートヤードHIROOで開催された池田杏莉さんとネルソン・ホーさんによる二人展『手にした灰色の土に、花を』。その最終日となる3月14日、作品に囲まれた静謐な空間の中で、出品作家の両名とキュレーターの丹原健翔さんによるトークイベントを開催いたしました。
2人の出会いや展示に至るまでの経緯、展示に込めた思いや能登半島をテーマとした展示をするにあたり、復興をアートとしてアプローチすることの価値観について濃密な対話が行われました。
トークイベントの収録音源はPodcastにて配信をしています。是非こちらもご視聴ください。
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二人の出会いと2年越しの約束
丹原: 皆さん、ありがとうございます。今日は最終日ということで、あえて僕も「今日初めて会場を見た」という新鮮な視点から、お二人のリサーチの背景や作品に込めた想いを掘り下げていければと思います。まずは、お二人が一緒に展示をやることになったきっかけを教えてください。
ネルソン: 最初は僕が声をかけたんですよ。2、3年前に池田くんの卒業制作を見に行って「このアーティスト、面白い!」って感動して。僕は日本で好きなアーティストとコミュニティを作りたいと思っていたので、彼と一緒にやりたいなって。
池田: 実は僕、ネルソンさんのことは4年以上前から知っていたんです。フランス留学中にインスタで見つけて、封筒に絵を描く作品がすごく刺さって。「いつか会いたい」と思っていたら、まさかの自分の卒展に本人が現れて(笑)。
丹原: まさかの相思相愛(笑)。そこから2年越しで、場所や相性をじっくり話し合って実現したんですね。

能登・輪島のリサーチ 瓦礫の中に見つけた「生」
丹原: 池田くんは、もう2年前から能登の輪島に拠点を置いて制作しているんですよね。
池田: はい。最初はボランティアで行ったんですけど、それだけじゃ解決しない世界があるなと気づいて。今は空き家を借りて制作しています。今回の展示では、津波で流された建材や、海岸の瓦礫、ボロボロになった家の畳なんかを材料に使っています。
ネルソン: 池田くんから能登の話を聞いて、やっぱり一緒に行くことが必要だと思ったんです。二人で車を往復24時間走らせて(笑)。1週間くらい滞在してリサーチしました。
丹原: ネルソンさんは、マレーシア出身という「外の視点」から被災地を見て、何を感じました?
ネルソン: 最初は正直、地震という重いテーマを扱うことに自信がなかったんです。でも実際に行ってみると、おじいちゃんもおばあちゃんも、子供たちもみんなすごく元気で。「東京で展示するなら、私たちの笑顔や元気な姿を見せてね」って言われて。喪失だけじゃない、現地の今の思いを届けなきゃいけないと強く感じました。

丹原: 展示からは「喪失」の先にある「再生」を感じます。でも、そこに至るまでには二人の間で激しい議論もあったとか。
ネルソン: 途中、考えの対立はありましたね。僕は、地割れした道路から草が生えていたり、おばあちゃんたちが笑っているのを見て「これは希望だ」って言ったんです。でも池田くんは「希望? なんで? 喪失はただ醜くて痛みしかないよ」って。
池田: 僕は現地にどっぷり浸かっていたから、まだ「希望」という言葉を扱うのは早すぎるし、危うい時期だと思って自分をセーブしていたんです。でも、ネルソンと回る中で、朝市の人たちが「震災で知ってもらえたからこそ、これはチャンスなんだ」って前向きに捉えている姿を改めて見て、ハッとさせられた。彼が僕の殻を破ってくれたというか、一緒に成長させてもらった気がします。

アートが果たす「通訳」と「バトン」の役割
丹原: 『手にした灰色の土に花を』。このタイトルに込められた想いを詳しく聞かせてください。
ネルソン: 能登に行った時、花瓶に「花は咲く」って言葉が書いてあるのを見たんです。英語に訳すと失われてしまう、日本語特有の抽象的で美しい希望だなと思って。そのイメージを池田くんに相談しました。
池田: 能登は雪国で、空も地面もどこか「灰色」なんです。そこに被災した景色が重なって、僕には世界が灰色に見えていた。ネルソンと話した「その土の中に、花を添えたい」という祈りを、この日本語に落とし込みました。


丹原: 『手にした灰色の土に花を』。このタイトルに込められた想いを詳しく聞かせてください。
ネルソン: 能登に行った時、花瓶に「花は咲く」って言葉が書いてあるのを見たんです。英語に訳すと失われてしまう、日本語特有の抽象的で美しい希望だなと思って。そのイメージを池田くんに相談しました。
池田: 能登は雪国で、空も地面もどこか「灰色」なんです。そこに被災した景色が重なって、僕には世界が灰色に見えていた。ネルソンと話した「その土の中に、花を添えたい」という祈りを、この日本語に落とし込みました。

技法の交換、そして次のステップへ
コートヤードHIROOで開催された池田杏莉さんとネルソン・ホーさんによる二人展『手にした灰色の土に、花を』。その最終日となる3月14日、作品に囲まれた静謐な空間の中で、出品作家の両名とキュレーターの丹原健翔さんによるトークイベントを開催いたしました。
2人の出会いや展示に至るまでの経緯、展示に込めた思いや能登半島をテーマとした展示をするにあたり、復興をアートとしてアプローチすることの価値観について濃密な対話が行われました。
トークイベントの収録音源はPodcastにて配信をしています。是非こちらもご視聴ください。
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