⼆⼈展「形⽽上彫刻」 尾前勇向 -記憶の再構築- 本岡景太 -関⼼と本質-
会期:2024年7月9日(火)~2024年7月28日(日)
「形⽽上学(けいじじょうがく)」
みなさまはこの⾔葉に馴染みがあるだろうか。
形⽽上学とは、現象を超越し、その背後にあるものの真の本質、根本原理、存在そのものなどを探究しようとする学問である。尾前勇向の作品は、⾵景写真を線描化したものをレイヤーにし、その記憶を咀嚼・再構築しながら、⾃⾝のバックグラウンドである建築の知識を最⼤限にいかしながら⽊をメディアとして抽象的な線の集積におこし、再度⾵景を連想させるというもの。⽊材という⼈間の介⼊が少ない素材を使い、⾃然⾃体の蓄積されてきたスケール・⾵景が語り継いできた物語・作家のこれまでの記憶をコラージュした四次元的な時間を含む作品と解釈できる。
本岡景太は、⾃分がインスピレーションをうけたモチーフを現実世界のルールを持ち込まずに張⼦の彫刻として制作している。物体のみならず⾵景そのものを⼀つの彫刻空間として捉えようとするその過程で、何の情報を残し・捨てながら作品にしてくか、それは作家の内⾯の本質的な関⼼を具現化するような作業ともいえる。
20世紀初頭にイタリアでおきた美術運動「形⽽上絵画」は、アーティスト カルロ・カッラによって提唱された「⾵景や静物の描写に神秘的な形⽽上的世界を暗⽰することを⽬指した」ものであり、時間と空間の倒錯や、ある種の不⾃然さが神秘的かつ幻想的に描かれている。
従来の伝統的な美の⼀瞬を切り取られた静⽌絵画から、未来派で「時間」という概念と空間的奥⾏きが加わり、そこからのシュルレアリスムへの発展は、よりプライベートな無意識ともいえる「内⾯性」に重きを置いていく流れになる。その間に位置するのが「形⽽上絵画」である。
尾前勇向と本岡景太による⼆⼈展「形⽽上彫刻」では、その美術運動のもっとも不確かで、だからこそ⾃由で、神秘的な表現を詰め込んだ展⽰となっている。
尾前勇向 -記憶の再構築-
1997年、宮崎県出身。東京藝術大学 美術学部 建築学科 卒業、同大学大学院 美術研究科 工芸専攻 木工芸研究室 修了。現在は一級建築士事務所に所属。同時に木工作家としても活動。
Instagram @yuga_omae
本岡景太 -関⼼と本質-
東京藝術大学大学院美術研究科美術専攻彫刻研究領域博士後期課程 在学中
東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修士課程 修了
武蔵野美術大学造形学部彫刻学科 卒業
Instagram @motonini3768